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CONVUM 佐藤 穣 社長

半導体から重量物搬送まで

真空吸着機器のパイオニアメーカーとして存在感を放つコンバム。前社長・伊勢幸治氏の逝去に伴い、新たに社長に就任したのは「叩き上げ」という言葉がピタリと当てはまるキャリアを重ねてきた佐藤穣氏。開発から営業まで自社を知り尽くした同氏が描く、今後の成長戦略を聞いた。

PROFILE
佐藤穣(さとう ゆたか)=1984年入社。2003年営業部長、秋田妙徳取締役。2008年執行役員東日本営業担当、CONVUM KOREA代表理事。2013年取締役執行役員開発担当兼開発部長。2022年取締役開発担当兼開発部長、CONVUM(THAILAND)代表取締役(現任)を経て2024年より現職。趣味はクルマのカスタム。これまでに86レビンなどを乗り継ぎ、現在は国内メーカーのSUVが愛車。最近は『あまりイジりすぎないように』と社員から釘を刺されているそう。

「開発力」で多様化する需要に対応

――入社のきっかけは。

地元の岩手に妙徳(コンバムの前身)が生産拠点を立ち上げた、というのが大きかったですね。当時の会社のパンフレットは、吸着パッドで地球を吸引している表紙で、面白い会社があるんだな、と興味を持ちました。私は設計の仕事をしたかったので、それをやらせてくれる会社だったというのも大きなポイントです。

入社当時は、自社の製品や技術を知ってもらうため、数多くの展示会に出展していたのですが、そこで展示するデモ機の開発に携わっていました。

――貴社の技術力PRの最前線にいたわけですね。

入社後5~6年は毎月のように晴海ふ頭に行っていました。展示会を通じ、製品の周知が広まっていくにつれお客様から、自動組み立て機や自動搬送機を作ってくれないかという要望が増え、それに対応する特機部門に異動しました。

少人数の部署でしたので、設計して、部品を旋盤やフライス盤で加工して、組み立てて、お客様の現場で調整して、と全て自分たちでやらなければなりませんでした。休日や夜中に働くことも普通でしたが、仕事自体は楽しかったので苦にはなりませんでした。

――それこそ休む暇も遊ぶ暇もない生活だったのですね。

それがそうでもなく、限られた時間の中で思いっきり遊んでいましたね。当時、新宿に「ニューヨークニューヨーク」というディスコがありまして、上京してきた地元の友人たちと繰り出していました。着替えを持って行って遊んで、また着替えて仕事へ、なんてこともザラでした。

――その後、量産品の設計部門に異動され、そこで開発した製品がいまだにベストセラーとして販売されています。

蛇腹形状のパッドなのですが、ドラフターを使っての設計では限界があり、最終的には金型を自分で磨いて仕上げました。のちに当社にもCADが導入され、設計もデジタルになりましたが、同じ仕様で作ったにも関わらず、お客様から『性能が悪くなった』と言われ謝りに行ったこともあります(笑)。

――のちに営業部長、開発部長など要職を経て、国内外の半導体関連市場の開拓にも尽力されました。業界動向にも明るい佐藤社長は、半導体市場はいつ回復すると見ていますか。

動きが具体的に出てくる年末、もしくは年初ではないかと見ています。AIに使用されるGPUや、AIスマホ、AIパソコンの登場が半導体市場のカギを握っています。当社ではこれらの動きが活発になることを見越し、静電気放電対策に特化した吸着パッド『ESD』シリーズを開発・上市し、拡販を進めています。

■地元・東北への地域貢献も視野に

――佐藤社長が感じている自社の強みは。

やはり開発力ですね。当社には工業試験所にあるような設備は全て整っていますし、自社で材料から作れるノウハウを持っています。吸着パッドのゴム部分は、以前は外注していたのですが、よりよい製品を供給するために自前の設備を用意し、ゴムの配合からこだわって開発しています。

半導体をはじめ、運ぶワークも複雑化・高機能化しており、吸着ハンドに求められる性能も高度化しています。こうしたお客様のさまざまな要求に対して、迅速かつ的確に対応できるのも当社のストロングポイントだと思います。

――これから注力していきたい分野は。

物流問題もありますが、農業や建設業なども総じて人手不足です。それらの現場では、何十㌔も入った資材袋や米袋など、重たく運びづらいものの搬送を人手に頼らざるを得ないケースが少なくありません。

現状、重量物の真空搬送は欧州はじめ海外メーカーが得意としていますが、導入コストが非常に高い。円安基調の現在はなおさらです。また納期も非常に長いと聞きます。これが当社の袋物の重量物の搬送に特化した吸着パレッチャー「SGP-H」シリーズなら、ローコストでいち早くお客様に納入できます。加えてメンテナンスやアフターサービスもタイムリーに行えます。

――海外メーカーのものに比べ、システム自体もコンパクトですし、中小の現場でも活用出来そうです。

ロボットエンジニアや生産技術がいないエンドユーザーでも簡単に運用できるシステムを構築し、導入ハードルを下げています。それこそ、ロボットではなく天井クレーンにつけて運用することも可能です。

――社長就任を機に取り組みたいことは。

当社が拠点を持つ東北は東日本大震災以降、慢性的な人手不足が続いています。三陸の水産工場などではいまだにご高齢の方が作業をされている姿をよく見ますが、この方たちに代わる人材もいません。こうした現場を持続可能にし、活性化できるような製品開発と支援をしていきます。また、当社には素晴らしい人材がたくさんいます。そんな彼らが誇りに思えるような会社に成長させていきたいと考えています。

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袋物吸着用パレッチャー「SGP-H

(2024年6月10日号掲載)