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Opinion

日本半導体製造装置協会 会長 河合 利樹 氏(東京エレクトロン社長・CEO)

AIや5Gといったデジタル化の進展で半導体関連の国内投資が活発化している。昨年落ち込みを見せた日本製半導体製造装置販売高は24年度以降に初の4兆円超えが予測されている。昨年5月、(一社)日本半導体製造装置協会(SEAJ)の会長に就いた河合利樹氏に半導体の重要性と市場拡大の背景、課題を聞いた。

かわい・としき 大阪府出身。明治大学経営学部卒業後、1986年東京エレクトロン入社。10年間ほどの大阪支社勤務や、6年間ほどの英国、ドイツ駐在などを経て2016年から代表取締役社長・CEO。昨年5月に日本半導体製造装置協会会長に。大学時代に取り組んだゴルフを仕事と趣味を兼ねて今も続けている。

——世界の半導体市場の急拡大が確実視されています。ここまで成長する産業はそうはありません。

「デジタルデータの通信量は2030年には現在の10倍になるという予測があります。このデータ通信量の増加と半導体市場の拡大は相関関係にあるのですが、2030年以降も今のビットコンピューティングに加え、脳型ニューロコンピューティングや量子コンピューティングが普及するので2040年には今のデータ量の100倍になると予想しています」

——まさにビッグデータの時代ですね。

「デジタル化の進展を受けて昨今、ビッグデータの時代と言われていますが、実際にはまだスモールデータです。本格的なビッグデータ時代はまさにこれから始まるところだと感じています。以前、取材を受けた際に『半導体産業の急成長はいつまで続くんですか?』なんて質問をもらいましたが、世界の大きな潮流はデジタルとグリーン。成長はこれからです。これにAIなどが普及することによって様々な便利なことが生まれてきています」

——課題もたくさん生まれているようです。

ICT産業の発展がこのまま続くと、20年から30年後にはエネルギーの枯渇が心配されます。現在でもデータセンターなどでの電力消費は急増しています。この問題を回避するにはデジタルとグリーンの両立が重要で、業界としてはデジタルの力でグリーン化をもっと促進することができるかもしれません。Green by DigitalGreen of Digitalの考え方です。それを進めるのに半導体の技術革新の重要性、半導体製造装置の重要性、また、SEAJのような装置メーカーでつくる協会の重要性が増すと考えています」

——半導体には高信頼性も重要だと強調されています。

「コンピュータが固まった、止まったということは自動車の自動運転や医療では許されません。ですから高信頼性が重要なのです」

——半導体製造技術で日本勢は韓国や台湾勢に遅れをとっている印象を受けます。

「我々の業界はグローバルにビジネスを進めているので、グローバルな視点で見ていく必要があると思います。エレクトロニクス産業のバリューチェーンの構造を図で表すと、底部に素材、材料があって、その上に材料を使って加工する半導体製造装置があり、またその上に半導体デバイス、PC、スマホなどの電子機器があります。最上部にはGAFAMのようなサービスプロバイダーなどが存在します。最上部が注目されがちですが、それらを支える材料と装置で日本は非常に高いシェアを握っています」

「日本の製造装置業界としてはデバイスメーカー、要するに我々のお客様から引き合いをいただいた際に、しっかり対応していくことが重要と考えています。 半導体のエコシステムの観点では、先ほどのバリューチェーンで示したように日本は製造装置や材料で強みを有しています。強固な国内サプライチェーンの中でそれを生かしていくことが必要です。材料については日本は世界で50%くらいのシェアがあります」

——日本の半導体の補助政策には前のめり感があるという指摘があります。

「国の補助政策については我々はコメントする立場にありませんが、政策に偏りがあるとは思いません。これだけ半導体産業が重要であり、また様々な産業の発展につながると認められたということは当協会としてはウェルカムだと考えています。一方、協会会員の売上高の合計を見ると9割近くが海外です。よってグローバルにフェアな対応をしていくことが重要です」

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2024125日号掲載)